5. アルマイト被膜測定
アルマイトの測定は、測定が簡単、小型軽量、低価格な、渦電流式膜厚計による非破壊・接触式測定が普及しています。
渦電流方式は、フェライトコアーに誘導コイルを巻き、50KHz~2MHzの高周波を流し、プローブを試験片に近づけるとアルミ板に高周波渦電流が発生します。 このとき、渦電流の大きさは試験片との距離によって変化するので、誘導コイルのインピーダンスを測定し、アルマイト被膜厚に換算する測定法です。誘導コイル磁界は試験片に対して直交方向に渦電流を発生させます。
測定にあたっては、試験片の材質の違い、厚さ、突起物の付近、湾曲部、あるいは端部に近づくほど渦電流が阻害されることによる測定誤差が大きくなります。さらに、外形φ0.3mm以下の接触ピン電極が、試験片の表面荒さや手振れにより、同一場場所を測定したつもりでも、測定ポイントが変化するので再現性が悪くなり、薄膜ほど測定誤差が大きくなる傾向があります。
静電容量式膜厚計「アドミッタンスゲージ」は、アルマイト表面が多孔質被膜(ポーラス)になっているため内部構造に空気が混入し、空気の比誘電率Er=1.0006とアルマイトの複合誘電体であり、誘電率が一定せず、アルマイトの測定には実用的ではないと考えていました。
しかし、アルミ合金ADC12のリン酸アルマイト被膜4~8μm付近(測定箇所により管理目標値が異なる)の膜厚を、電極面積φ9.4mmのプラスチック製ハンドプローブを用い、渦電流式膜厚計とアドミッタンスゲージとの比較試験を行った結果、渦電流式膜厚計で測定回数20回の測定に対して、アドミッタンスゲージの測定においては2~3回の測定と同じ結果が得られました。
本結果は点測定による渦電流方式に対してアドミッタンスゲージは面での測定であるため、その優位性が立証されました。ただし、アドミッタンスゲージによる測定は2μm以上の被膜に限定されます。
アドミッタンスゲージの測定周波数は10KHz±0.5%、測定電圧1.0Vに制御した4端子法で、ケーブ抵抗や電圧降下の影響を低減する測定方式のため、直線性及び再現性が格段と向上しています。また電極間の電気力線の膨らみに起因するエッジ効果の影響は、ガード電極なしでも、最大膜厚測定範囲40μm以内の距離では無視できるので、試験片端部より5mm以内でも正確な測定ができます。
導電性ゴムは柔軟性があり、試 験片の波打ちを吸収する効果と、電極面積が大きく測定の平均値を表示するため、誤差要因の影響を最小限に低減した、高精度と高い再現性の良い測定ができます。そのため渦電流式膜厚計より、作業効率が格段に良くなる結果となりました。